TungTech, テクニカル記事 – TungForce-Rec


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切削工具業界では、長年、超硬ソリッドエンドミルに取って替わるインサート式工具の開発に心血を注いできましたが、多くは日の目を見ぬまま終わっています。その原因のひとつとして、小径の超硬ソリッド工具には切れ刃を多く設けることができるのに対して、インサート式工具では刃数を多く設けることが出来ない点が挙げられます。

高速回転で使用される小径工具は、非常に大きくな遠心力がインサートにかかります。それに耐え、インサートを安全に保持できるネジは、自然と大きなものとなってしまいます。従来のインサート式エンドミルには、平底インサートを採用しており、ネジのみでインサートを保持していました。また、インサート自体も大きなネジを受け止めるために自然と大型化し、結果、工具の刃数に限界ができてきたわけです。

タンガロイの提案する、TungForce-Rec(タングフォース・レック)は、この問題を見事に解決しました。インサート底面をV形状(舟底形状)にし、またそれを受けるカッター側のインサート座もV形状デザインにしたのです。


こうすることによって、ネジにかかる大きな遠心力を軽減し、その主力をV形状座面で受け止め、工具をより高速で回転させることを可能としました。また、このV形状の採用により、ネジもより大型で強力なものを使用できるようになりました。

V形状のもう一つのメリットは、インサートが工具中心線の上で重なり合うようなデザインになり、小径でもより多くのインサートが設置可能になります。また、これにより工具のコア径を大きくとることができ、工具に安定性をもたらします。従来の平底インサートでは、中心で重なり合わせることは不可能で、たとえ一枚刃工具でもあっても、コア径を十分にとることは不可能でした。

このような特徴を併せもつTungForce-Recは、超硬ソリッド工具に比べ、高い切削能率を実現します。 

正面や壁面の精度もまた、ソリッド工具からインサート式工具へ置き換える際、大きな障壁となっていました。TungForce-Recは優れたインサート座の構造と大型のネジの採用によりインサートの安定性を向上することができました。また、高精度インサートの採用により面精度を向上させると同時に、切削抵抗を軽減し繰返し精度を向上させました。これらの特徴により、ソリッド工具に匹敵する面精度を実現できるに至りました。

安定性を重視した工具デザインと高精度インサートの採用により、高いインサート繰返し精度を実現し、また、超硬ソリッドエンドミル使用時と比べ、作業のダウンタイムを大幅に低減しました。これは、TungForce-Recはカッター本体を機械から取り外さずに位置出しが可能だからで、超硬ソリッド工具を使用した場合は、工具を機械から外し、新しい工具を装着し、プリセッタで位置出しし、機械へ戻して、タッチオフ、そして工具のオフセットを入力する手間がかかります。


ソリッドエンドミルは購入価格が比較的高いため、多くのユーザは再研磨をして使用します。これは一見、効率が良いようですが、再研磨の納期は最低でも2週間とすると、余裕を見て、最低でも3週間分の在庫を常時持っておく必要がでてきます。不必要に在庫に経費をかけることは避けなくてはなりません。また、再研磨された工具は、径が小さくなっており、工具のセットアップと位置出しに更なる時間を浪費することになります。異なる径のエンドミルを多数在庫すると、間違った径を取り付ける可能性もでてきます。高いインサート繰返し精度をもつTungForce-Recでは、こういった懸念がなくなります。従来、再研磨された工具の切削性能は、新品のそれに比べ7割程度に落ちるといわれておりますが、TungForce-Recはインサートを替えるだけで、高い切削性能を毎回得ることができます。このように、インサート式のTungForce-Recは、ソリッド工具に比べ、経費がかかる過剰在庫を抑制します。

ソリッドエンドミルに比べ、3倍のランピング角を誇るTungForce-Recは、溝加工や穴加工に最適な工具です。ソリッド工具は、シャンクが超硬のため、長突出し加工においても工具のたわみが少なく済みます。TungForce-Recには、モジュラタイプも標準設定されており、超硬シャンクを使用することで、安価な投資でも、ソリッド工具と同様の安定した長突出し加工が可能になります。

TungForce-Recは、あらゆる製造ラインのエンドミル加工において活躍の幅を広げています。最近のNC旋盤には、回転工具が装備できる仕様もあるが、使用工具寸法に制限があります。これまでは小径の超硬エンドミルが唯一の選択肢であったところ、TungForce-Recは小径のインサート式エンドミルとして新たなる選択肢としての地位を築いています。

TungForce-Recの最大の魅力は、これらのメリットを、超硬ソリッド工具の管理費を下回るトータルコストで享受できる点ではないでしょうか。

TungForce-Recは、その汎用性の高さにより、肩削り、溝削り、斜め送り加工、ヘリカル送り、穴の繰り拡げ、プランジ加工、や小突っ込み横送りなど、幅広い加工への応用が可能です。工具径は、8ミリから40ミリまで設定。インサート材種は、鋼、ステンレス鋼、鋳鉄、アルミ、チタン、インコネル、そして焼き入れ鋼の加工用をそれぞれ取りそろえています。TungForce-Recは あらゆる製造現場において必要不可欠な小径エンドミル工具となるでしょう。